キンカンのブログ

気が向いたら書いています。

眠たさ

 目のあたりにとろとろとした灰汁がたまってくる。その灰汁のぶんだけ、まぶたはずるずるとおもくなる。現実は眼のそとに広がっているが、どんどんと薄まり力が入らずくぐもった肌色の世界に落ちていく。その世界は漏斗のように下のほうには一度落ちれば戻れない穴がぽっかりと口を開いているが、抗いきれずずるずると落ちそうになる。まずいと思い手に力を入れると、ふっと一瞬目の前の景色が突然に現れる。一瞬わけがわからず、また周囲に人がいることを思いだしすこしばつが悪い気持ちになりつつ、腕の位置を直したりする。そうしているとまた甘ったるいとすら思えるような温かく心地よい泥が首からその水位をあげて口、鼻、ついには目までたどりつく。息は全く苦しくない。すうすうと暖房の乾燥したあたたかいにおいがするだけだ。くう、と前につんのめる。目は九割がた閉じてしまっている。と思うと完全に閉じてしまった。もはや前につんのめっていることすら気づいていない。数秒経つ。ぱた、と目を開ける。その目には視線というものがなく記号化される以前の「目」であり、物質としてそこにあるだけの目である。ふっとその目に命が宿り周囲を見渡す。死んでいたものが生き返る瞬間に似たものがある。そしてまた睡魔の誘惑に堕ちる。