やっと免許が取れた。苦手だ苦手だと言い訳してずるずる通っていたらもう半年になってしまった。通い始めた頃の記憶がもう高校生のときの記憶などと同じフォルダに入ってしまった感じがする。今日は朝から散々な日だった。まず電車に乗って目的の駅まで行く途中何を思ったか一駅早く降りてしまった。何を思ったかと言ったが、目的の駅と降りた駅その間隔がかなり狭く2分程度早く着いたのだと勘違いして降りてしまったのだ。
ンバカすぎッ!
ぼんやりした顔で見知らぬ駅を出て、しかし足は走り出していた。数分の違いで間違えたが数分の違いということは走れば何とかなるはずだ。方向も分かっている。息を切らして足をバタつかせる。サイゼリヤを右に曲がる。痛い。脇腹が痛い。朝早く出たから朝ご飯も食べてないのに。通勤ラッシュにぶつかって持ってきたパンも食べれず電車の端っこで立っていたのに。つらい。でも自分が全部悪い。ご飯はもう少し早く起きれば食べられただろうし、駅を間違えばければこんなこと起きなかった。あー気分悪い。痛い。あ、駅見えた。時間もまだ間に合う。ああよかった。人間頑張れば何とかなるんだな。これで笑い話だ。今度友達に誇張と脚色まみれで話そうっと。そう思いながらバスを待ったが待てども待てどもバスが来ない。そういう曲昔ありましたよねニコニコで。バスは来る場所が思ってたところと違った。説明が難しいが、自分はここのバスの時刻表をよく調べ抜いていた。そこに平日の通勤ラッシュならバスが来る場所が変わりますよとあった。危ない危ない調べてよかった。知らずに行ってたら大変なことだったとほっと胸をなで下ろしたのが、昨日のことだ。見よ、通勤ラッシュだと思ったのに場所が変わってないではないか。どういうこと?多分通勤ラッシュというほど人がいなかったとかそんなとこだろう。ふざけやがって。
ぜえぜえ言いながら食べてなかった朝食のパンをかじりつつ、次のバスがいつだろうかとほとんど絶望しながら調べたところ割と早く次の便があることが分かった。これなら間に合う。というか自分の失敗を見越してかなりゆとりを持って出発したのがここで効いた。朝食を食べてのんびりしていたらこれはできなかった。走って渇いた喉にしがみつくように詰まるパンを三ツ矢サイダーで溶かして胃に流し込む。さっきまで胃が空っぽで、しかも全力疾走で負担をかけたからか胃の具合が変だ。胃が「なんで急にそんなことするんスか!?」といわんばかりにムカムカして気持ち悪くなってくる。吐くほどではなかったが空いてるトイレの個室に入って一息ついた。ああやっぱり、自分は1人が好きなんじゃなく、1人でいないと人に迷惑をかけるから1人でいたいだけなんだと再認識させられた。免許センターに着いてからは特に問題なく進んだ。受付も済ませて、試験問題も簡単だった。今まで受けた試験で一番簡単な試験だったくらいだ。そのあとの諸々の手続きも問題なかった。支払いの際に免許証の暗証番号を書いた紙を出してしまったくらいだ。でもとても疲れた。自分が昔の劇作家みたいな顔をして写っている免許証を眺めながら口の端や瞼や足に蓄積したとろっとした疲労を感じる。全部終わってバスに揺られながらうとうとしていると大学の前に止まって、色付きの紙吹雪みたいな大学生がどっと乗り込んでにぎやかになったが、あまり眠気を妨げなかった。そのあとは電車に乗り換えて帰った。駅を出ると小雨が降っていた。バスを待っているときからはちはちと首筋に冷たさを感じたことがあったし、そうだろうと思ったが、夏の始まりらしい濃厚な空のような、もしくは希薄なプールのような匂いがむっちりと鼻先にぶつかって正直ビビった。「雨すぎ!」って思った。でも湿気のなかに包まれて慣れてくると、疲労色(たぶん少し暗い黄土色)に染まった体に合ってて楽な感じがした。濃度が一致しているというか、浸透圧が発生しないというか。そうだ。湿気が高いと空気が疲れてる感じがする。