キンカンのブログ

気が向いたら書いています。

2022/10/21

 痛い、痛い。口内炎が痛い。ほんとに、嫌になる。口内炎とは読んで字の如く、口内で発生した炎症のことだが、この程度の文字列では語りきれないほどの陰険な意地悪さを持っている。なぜ?たかが、口の中の、炎症じゃないか。肘を擦りむいたりしたほうがまだ痛いんじゃないかな。―――いいえ。全然、それはちがう。理由は様々あるが、まず、口の中ほど傷を覆いにくい場所はないから。というのが大きい。肘を擦りむきゃバンソーコーでもなんでも貼ればいい。貼ったら安心。風呂さえ気をつければそう剥がれることはない。しかしこれが口内ならどうだろう。ものを食ったらば勿論、食わずとも様々の苦難がその「覆い」に降りかかることは想像に難くない。まず、唾液。こんこんと湧き出るその水は、傷の上に何物をも定着させない。次に、舌。触ってはいけないと意識するほど触ってしまうのが人情だ。なにせこんなにも口内は狭い。自然に当たってしまう。このとおり、どうにも覆うことができない。

 次に、その口内炎の発生条件が問題なのだ。条件は、睡眠不足・ストレス。あとは何らかの理由で口内に傷がついたときなど。睡眠不足・口内での事故はまあいい。気をつければ済む話だ。しかしストレス。ストレス!いままさに、お前、口内炎のせいでストレスを被っているのだ。何がストレスだ。言うなれば、口内炎の発生条件が口内炎が存在することによって満たされるという恐ろしい法則。さらには、この口内炎を治すために口内を清潔に保つ必要がある。しかたないので入念に歯を磨く。ぞり、と嫌な音が響くが早いか脳天を痛みが貫く。ブラシの毛先が傷口をなぞったのだ。細心の注意はもちろんするが、口内は狭い。どうしても当たってしまう。当たったらしばらく放心状態になってしまう。頭の中では絶え間なく口内炎への呪詛が繰り返される。

 不思議なことで、こんな口内炎も治ると、あったころがどんなだったか忘れてしまう。喉元すぎれば、だなあと思う。