キンカンのブログ

気が向いたら書いています。

いないいない〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜バァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜カ!

「残業する時タイムカードを切っておく、ってなんだよ」

今日もいつものように同僚と喫煙室で軽口を言い合う。

「こないだも先輩のミスで休日出勤だよ。で、先輩はなんでか来てねえの。まったく、先輩クビにしてくれるんなら先輩の分の仕事だって、おれはやるぜ。」

同僚は、口角だけ上がった、目は全く笑っていない表情でタバコを灰皿にぎりぎりと押し付けた。

そう、お察しの通りウチはブラックだ。残業代など見たこともなく、そもそも金払いが悪い。金を焼いて捨ててんじゃないのか?そのくせ俺たちが毎日喫煙所で叩き合っている軽口の内容を、丁寧に喋るコンサルにはいくらでも払う。つまりは―――――焼いて捨ててるようなものだ。

いったん口にためた煙を舐めてから、ふうと吹き出した。

 そう……思うに、この世で最も厄介なことは――――ギリギリ笑い事になることだ。笑い事になるなら、人間は限界まで、笑って済まそうとする。そう、限界まで………

 

仕事に戻った。

すっと椅子に戻って座った途端、

なんだか突然、

息が、吸いたくなった。

そうだ昔は腹の底からできていたはずなのに、肺がどんどん小さくなって、今は気管の分しか吸えていないように感じる。いや確かに、煙草は吸っているがそういう息苦しさじゃない。思わず、そのままを目の前のパソコンに打ち込んだ。

「息 吸えない」

カチャッ

 

過換気症候群がヒットした。

 

普段なら、俺は何をしているんだろうとそこで我にかえって仕事をしただろうが、今日はそういう気分でもなかった。それどころかこの一連の、極小の悲喜劇に、何かこう皮肉めいた示唆を感じずにはいられなかった。ずっと思い悩んでいたものに、答えを与えられたような、逆に言えば「それで片付けられてしまった」口惜しさのような………

しばらく ぼうっ と考えていたが、部長の檄が飛ぶ前にまたおれは動き出した。

 

次の日、

昼飯時に変化をつけることにした。

急な思いつきだった。先日感じた息苦しさを少しでも和らげられるかな、そう思って思い切って決断した。といっても、昼食の内容は変わらないのだ。場所。場所をトイレにしたのだ。場所を変えると言っても、本来なら昼食もすぐ終わらせて仕事をやってるやつばかりだから、時間がかかれば上司も嫌な顔をする。しかしトイレならそうはかからない。

ほんの少しの変化で良かった。なにか、なにか変えたかった。

初めてのことをやるワクワクからか、昼飯までの時間が少しだけ色づいていっていることに気づく。それが頭にちらついて、きらめく。

便所飯。

学生時代だってまったくやらなかったことを今日やるのだ。なんとなくこの歳でピンポンダッシュでもするような、気恥ずかしい感じがむしろ新鮮だった。

いよいよ昼になった。勇み足でオフィスを出て、弁当の入ったビニール袋を持ってトイレに向かう。しかしそこで足が止まった。忘れていた。人の目というものを!

どう見ても弁当の入ったビニール袋を持ってトイレに駆け込むのだ。変人じゃないか!できれば変人にはなりたくない。ビニール袋の持ち手を心細げにくしゃくしゃ触りながら頭を絞って考えた。

そうだ。

入れる袋を変えればいい。

そう、ビニール袋、半透明のビニール袋なぞに入れるから中身が透けるし形もわかる。ならば!しっかりした袋、それもトイレに持って入っておかしくないような袋にすればいいと思ったけれどもそんな袋など思いつかない!

ないだろう! トイレに持っていくのが当たり前!―――そんな袋は!

 

 

 

いや…。

あった。

 

 

金玉袋だ!イェイ!

 

お後がよろしいようで。